TJによる日本語解体新書『文章読本』

「〇〇読本」というタイトルの本はたびたび見かけますが、
恐らく「読本」とつけた本を最初に名付けたのは、谷崎潤一郎だと思われます。

谷崎氏による一般人にもわかる文章の書き方を教えてくれますが、
こうすれば文章が上手になるといった方法はなく、むしろ
「言語は万能ではないこと、その働きは不自由であり、時には有害なものであること」
と説きます。

なるほど、文の書き方だけでなく、大人になれば手っ取り早い習得法に何かと目が移りがちですが、何かを習得するには繰り返し練習すること、文章については本を繰り返したくさん読み、自分で繰り返し書く事が大事だと、改めて教えられました。

特に難しい言い回しをせずに、実用的に書くことが、藝術的の手腕を要するところで、
志賀直哉氏の『城の崎にて』の一文を引用していますが、正直すごく普通の文章です。
普通なんだけど、ちゃんと情景が伝わる。
無駄な主語や修飾語がない。
音読しても読みやすい。
これこそが良い文章であり、藝術的というわけです。
(谷崎氏は、自分の書いた文を繰り返し音読し、推敲を重ねていたそうです)

英語と日本語の違いについても説明されています。
日本語には文法に縛られず、省ける所は省けますが、
これは多くを語らない国民性にあり、「男は黙って云々」という文化と日本語が関係しています。
日本語の言語と文化の関連性についても興味深かったです。

さらに文章の要素を
一、用語 二、調子 三、文体 四、体裁 五、品格 六、含蓄
と、日本語を細かく解体して、自身の書き方、文章のあり方について教えてくれました。

特に品格については普段の礼儀作法や身だしなみと同じで、
饒舌を慎む、言葉使いに気をつけるなど、耳の痛い話が続きました。

そして含蓄こそが、この本の言いたい事のほとんどで、
先ほどの品格であり、無駄な形容詞や副詞を使わず、「言葉を惜しんで使う」のだそうです。

結局、上記のような良い文章を書くには感覚を磨く事が大事で、
「読者自身が感覚を以つて感じ分けるより外に、他から教えようはない」
とのことです。
冒頭に、これを読めば文章が上手くなるわけではないと但し書きがあった通り、
すぐに文章が上手くなる方法の近道はありません。
谷崎氏自身、文章を書く才能が元々あったのだろうと思いますが、
その心がけや洞察力は、とても参考になりました。