思ったよりガチなSFだった『ふわふわの泉 』

表紙やタイトルで決めることなかれ。
努力しないで生きることがモットーのメガネっ子の女子高生で化学部部長、浅倉泉が偶然発見した物質”ふわふわ”が世界を変える話。

一見ライトノベルのように見えますが、野尻抱介による緻密な設定が土台になっているハードSFです。
ふわふわの実体は、ダイヤモンドの炭素原子の半分を窒素に置き換えた「立方晶窒化炭素」と呼ばれる物質で、ダイヤモンドより硬いと予想されており、理論上では存在する物質だそうです。

また、ふわふわの元はコンタクトジャパン4という科学イベントに著者が提供した近未来のテクノロジーで、ふわふわの応用について著名なSF作家やJAXAの人にも話をもちかけたそうです。
なのでしっかりとした構想が土台になったうえで話が進むのですが、立方晶窒化炭素が偶然できてしまった過程やふわふわを応用した技術の説明はかなり難しい内容になっていました。
僕は化学はほとんど無知なのでこのへんはさっぱりでした・・・。

ちなみに立方晶窒化炭素の作成はまだ実現されていないようです。

で、偶然ふわふわを発明した泉は「ふわふわ社」を立ち上げ、女子高生にして社長になります。
アップルのジョブズ並みの経営手腕を発揮し、3年後にはボーイング社と肩を並べる程のグローバル企業に成長します。
ふわふわを応用して一儲けどころか見事に世の中を変えてしまいます。

泉すごすぎ(笑)バリバリ働きすぎ!楽して生きたいんじゃないのかと。
多少困難なことや面倒臭いことにも巻き込まれますが、その中で大事なことに気づきます。
世の中には「してよい努力としなくてもよい努力」があることを。

泉は損得関係なく「してよい努力」を選択し、全力で走ります。
このへんは痛快で、いいぞもっとやれという感じでした。

初版はなんと2002年でして、この時に良きリケジョの姿を描いた著者は先見の明があると思います。
ちなみに表紙はこれです。ふわふわしすぎだ!(笑)しかもファミ通文庫!!

p3-4-15
本屋さんで買うのは少し勇気がいる表紙ですね。

「クレギオン」シリーズも読みましたが、著者は科学全般の知識に非常に詳しいです。
難しい専門用語もでますが、わからなかったらすっとばして読んでも面白いです。
とにかく楽しく前向きに物語が続くので。
著者の未来は明るいというメッセージがよく伝わりました。

参考画像:マッドサイエンティストの手帳(堀晃氏)

※堀さんの作品も好きです。