改めて知る宇宙ヤバイ『宇宙論入門―誕生から未来へ』

宇宙論と一言でいうと学問のいち分野に聞こえますが、実際には量子論、相対性理論、素粒子物理学と物理学の中でも難しいとされる分野を熟知していないと、論ずることは難しいです。
僕は一応大学で物理を専攻し、卒論では特殊相対性理論について書きました。
特殊相対論は「光は一定」という条件のもと、四次元時空の運動について研究するので、たいして勉強してない学部生でもなんとかできるレベルですが、一般相対論は「重力」を取り入れ、時空がゆがむことを考慮するので一気に難しくなる。
その辺りも復習しつつ、なんとなくわかっているようでわからない宇宙論について調べようと思いました。

「入門」といってもせめて高校で理系クラスに進んでいないと難しいかなと思います。
いきなりエントロピーの増大や素粒子のスピンの話が出ても、初学者には難しいかなと思います。
ただ、細かいところは理解できなくても読み進めることができる点は、上手く構成してあるからかと思います。

僕としては、宇宙と粒子の振る舞いが似ていることに興味を持っており、自分のデザイン作品のテーマでもあったのですが、それが「ウロボロスの蛇」と言われているのが初耳でした。

「素粒子物理学研究を進める事によって宇宙の全体の構造がわかる」

これは宇宙の始まりがビッグバンで、初期宇宙はちっちゃい火の玉から始まるからであり、そこの頃の素粒子の振る舞いを研究することで、現在の宇宙のことや将来宇宙は膨張しつづけるのか、収縮するのかがわかるんだそうで。
このへんはまだわかっていない暗黒物質、暗黒エネルギーについても知る必要があるので、これからの研究成果が楽しみなところでもあります。

また真空のエネルギーの相転移の話が興味深かった。
一般に真空というと「何もない」イメージだけど、量子論的には電子と陽電子と絶えず生成・消滅を繰り返す場。そこから宇宙が生まれる。そして子宇宙、孫宇宙が生まれる。
佐藤氏が提唱する「インフレーション理論」は知っていましたが、理解は深まりました。(完全に理解するには専門的に勉強しないといけませんが)

最後は、人間原理について。
この宇宙は人間が生まれるためにデザインされた宇宙であるという考え。
なぜ3次元空間なのか、あまたある物理現象が今と少しでも違うと地球のような惑星は誕生できないそうで、これは偶然なのか、旧約聖書のように神がこの世を造ったのか。
また人類は未来永久繁栄し続けるのか、それとも100年程度で自滅、すなわち自分たちで滅亡の道へ向かうのか。
佐藤氏は後者の確率が高いというが、僕自身も同じ考え。

宇宙を研究することは、人類の未来を考えることにも繋がる。
そう考えさせられる一冊でした。