『太陽の簒奪者』はリアルなファーストコンタクト

尻Pこと野尻抱介によるハードSF。
星雲賞を何度も受賞し、どの作品も面白く、新作が出ればすぐ買うほど好きなSF作家です。
が、twitterを見るとニコニコ動画にはまっているようで、とにかく遅筆な方です。(笑)

異星人のファーストコンタクトはよくあるテーマですが、この物語は著者の緻密な設定が背景にあり、実際に起こりうるというか、説得力のある舞台になっています。

舞台は2006年。天文部に所属する女子高生、白石亜紀は、水星から鉱物資源が吹き出す現象を発見。世界各地で観測され、それが太陽をとりまくリングになり、地球への日照量が激減。地球環境が激変し、大被害を受ける人類。いったい誰が何の目的でリングを形成したのか?という話。

大人になった亜紀はリングを破壊するミッションに参加し、宇宙へ旅立ちます。
彼女は天文部に所属していただけあって、宇宙や知的生命体に対する憧れを持っていますが、その情熱を内に秘めて、落ち着いて目の前の出来事に対処し、ミッションを遂行していきます。
全体を通して、知的生命体と人類はどう接触すべきかが焦点にあてられ、読者も巻き込んで大きな議論に発展していきます。

こちらの通信に一切応答しないビルダーと呼ばれる生命体は何者か。
何の目的で太陽系にやってきたのか。
人類は彼らとどう接触すべきか。
彼らは友好的か、敵対的か。
人類は存続できるのか。
様々な思惑の中で亜紀は葛藤します。

特にビルダーは人類に対してどう思っているのか。待っている未来は「未知との遭遇」か「エイリアン」か。

仮に友好的であっても圧倒的な科学力をもつ者と人類は対等の関係でいられるか、彼らを撃退できる兵器を持っている場合は彼らとどう接するか等、ファーストコンタクトには様々なケースがありうるわけで、僕自身もかなり考えさせられました。

SFというと専門用語が大量に出て敬遠している人もいるようですが、著者の文体は極力専門用語を排除し、シンプルでわかりやすい文体になっています。
削れるだけ削った文やセリフは、直接胸に刺さる時もあります。
読了後の満腹感は半端なかったです。