『陰翳礼讃』はデザイナー必読本なのか

谷崎潤一郎の日本文化の「陰翳」について考察された随筆。
西洋文化が庶民に浸透し、一般化しつつある昭和初期。
東洋と西洋の文化や思想の違いを家屋から日用品、食、芸術などから具体例を紹介しつつ、日本人独特の闇に対する美意識を再発見させてくれます。

僕の住む街にも町屋と言って昔ながらの家がありますが、確かに外は晴れてても薄暗くひんやりしている。
でもなんか落ち着くのは生粋の日本人だからでしょうか。
掛け軸や工芸品の色合いは闇があることを前提にして制作、色付けしていて、電気ランプでピカーと明るい部屋では良さが損なわれるのも、思わず納得してしまいました。

https://www.youtube.com/watch?v=nWC5rVt0pW0

また日本独自の科学が発展すれば、日本家屋に合う電化製品や照明も出来たのではないかという発想も面白い。
確かに冷暖房やテレビなどが日本家屋仕様だとどんなプロダクトになっていたのか、PCやWebサイトは縦書きになってたのかなと、勝手にあれこれと考えてしまいました。

和食は目で楽しむだけでなく瞑想に近いと考え、蝋燭の灯のもとでお膳の料理や漆器の椀物を食するくだりを読んだ時は、いつか瞑想という観点で一人で食事をしてみたいと思いました。
羊羹の黒でなく漆黒感、味噌汁の濁りかたひとつにしても、ここまで観察すると普段身の回りの物に対する見え方もまた変わってきます。

最近は伝統回帰というか和モダンテイストの家も多く、ライトもただ明るくするだけでなく、様々な蛍光灯が売られています。また照明も間接照明などライティングの技術も進化しているので、現在の日本の陰翳について谷崎氏がご存命だったら是非感想を聞いてみたいなと思いました。

ちなみにデザイナー必読!とたまに見かけますが、別にデザイナーじゃなくてもオススメできます。
日本の伝統美を再認識できるし、鋭い観察眼から生まれる流れるような文体は相変わらず秀逸。
デザイナーにオススメするなら、ライター、コピーライター、フォトグラファーにもオススメしたい。
ページ数も60頁ほどでダラダラとせず完結するので、読了まで飽きずに読めました。
あと猛烈に羊羹が食べたくなりました(笑)

他にも「懶惰の説」「恋愛及び色情」「客ぎらい」「旅のいろいろ」「厠のいろいろ」も収録されています。
こちらも面白かったのでいつかレビューしたいなと思います。