『容疑者Xの献身』は完璧だが物憂げなトリック

隣に住む女性・靖子が元夫を殺害、彼女に恋心を抱いていた天才数学者・石神は巧妙に事件を隠す。難航する捜査に手を焼く刑事草薙は友人の天才物理学者・湯川に相談する。
しかし石神と湯川は大学の旧友だったことがわかる。湯川は石神が事件に関わっているのではないかと睨み、事件の真相に迫る・・・。

「人に解けない問題を作るのと、その問題を解くのとでは、どちらが難しいか」という問題について二人は議論していたが、それを地で行くような形で石神の作った問題に湯川が解いていきます。

ここまでだと二人の天才科学者の推理対決!でありがちのミステリー小説のようですが、石神の靖子に対する恋というか純愛がこの物語のキーになっています。

僕は元々ミステリー小説はあまり好きではないです。
また僕は大学時代は物理を専攻していたので、多少教授や学者なる方々に触れることもありましたが、天才と言われる学者は専門の学問では天才ぶりを発揮できても他の分野には全く興味のない人が多いです。(石神は数学以外には全く興味ないし無知でした)

なので警察もお手上げのアリバイを作ったり難事件を解決するには、多彩な知識や経験をもって推測する必要があるので、「天才科学者」だったら良いわけではないと思っています。
なので細かいツッコミが喉に引っかかってたので、ミステリーや推理系の小説は敬遠していました。

以前読んだ「パラレルワールド・ラブストーリー」が良かったし、直木賞もとった作品なので読んでみました。
こういうナントカ賞を受賞した本は、たちまち「買えコノヤロー」と言わんばかりに本屋の入口を陣取り、うず高く陳列されるので逆に読む気が失せるのですが、今頃になると落ち着いて読むことができるんですよね。

序盤でだいたいオチは見当ついてましたが、最後の天地がひっくり返るような真相にはやられました。
どんな天才数学者がしかけたトリックでも、自分の感情までは計算できない。
それが報われない恋だとわかっていても。