二つの世界で錯綜する友情と恋『パラレルワールド・ラブストーリー』

・脳科学の研究者である敦賀崇史は、親友であり同じ研究所で働く三輪智彦から彼女、麻由子を紹介される。その彼女は崇史が大学院生の頃、電車でよく見かけた淡い恋心を抱いていた女性だった。
・ある日目が覚めると、麻由子と同棲している自分がいた。それも何の疑問もなく、普通に。

この二つの世界から物語はスタートします。
一つ目の世界では、親友の彼女を愛せずにはいられなくなり、もうひとつの世界では彼女は本当に自分のことが好きなのか、そもそも付き合い始めたきっかけは?あいまいな記憶しかなく、崇史は苦悩します。
そしてどちらの世界でも不可解なことがあることに気づき、物語は徐々に真相に迫っていきます。

初めて東野圭吾氏の作品を読みましたが、ストーリーの進め方が上手く、文章もとても読みやすかったです。
久しぶりに一気読みしました。
崩したくない友情。それでも抑えきれない恋。どれが本当の記憶なのか。
ラブストーリーとサスペンス、両方味わえる作品です。

自分としては三人の友情、恋愛の行く末も気になり面白い所でしたが、
人間の記憶の曖昧さ、今の自分は記憶や体験で形成されることに改めて気付かされた所が良かったと思っています。

“たとえ記憶が幻の同義語であったとしても、人は記憶によって生きるものだ。
コンピュータの普及が記憶の外部化を可能にした時、あなた達はその意味をもっと真剣に考えるべきだった。”(劇場版攻殻機動隊より)

記憶なんて適当なもの。でも人間はそれによって生きる不安定な生き物なんですね。
はっきりしないふわっとした部分、そこにメスをスッと入れられた、脳外科の手術を受けたような読了感でした。