純愛を超えた純愛『春琴抄』

僕がTJ(谷崎潤一郎)の作品を読むきっかけになった本です。こんな綺麗な日本語を書く作家は後にも先にもいないかと。

盲目で美しく気高い三味線師匠春琴と、弟子であり奉公人の佐助の物語。恋とも愛とも言い切れない、他人が一切入れない二人だけの官能の世界を描いた、わずか100ページ弱の見事な小説です。

とにかく佐助の献身ぶりがすごい。どんなに虐められても我儘を云われても、泣かされようが蹴られようが、とにかく春琴に尽くす。
これではただのマゾヒズムな男。しかしある日、春琴の顔が傷つけられてしまい、その後にする佐助の行動をみて、ああこれが本当の愛なのか、世間一般でよく使われる「愛」を超えた心を感じました。

ぱっと見は春琴がドS、佐助がドMという関係ですが、それだけではとても片付けられない、歳を経るごとにむしろ輝く二人の関係に、精神的な繋がりの美しさを覚えました。

文体は句読点がほとんどないので慣れるまで読みづらい感はありましたが、後に読んだ「文章読本」では、意図的に句読点を減らし、薄い墨でサラサラと書いた雰囲気を出すためにこのような文章にした、とのことです。
そう言われて読み返すと、なるほど、流れるような文がこの物語にはぴったりだなと思いました。