騙し騙されの愛憎劇『卍』

ある若奥様が(谷崎)先生に自分にふりかかったけったいな愛憎劇を告白する話。
初めはちょっとした悪戯から始まった光子との関係が、いつの間にやら同性愛、嫉妬、不倫と、一言では云いきれない関係が次々と発覚。途中からは裏切りの連続が続いて、誰と誰がグルになってるかわからなくなり、
はて、僕も光子に騙されてるのか知らん。
という気イさえするのんです。

そんな谷崎潤一郎の女性を崇拝する気持ち、マゾヒズムが凝縮された作品で、なるほど代表作のひとつと言われるのも納得。
直接的な性描写もなく、書かない(もしくは書く必要がないようにする)ワザも見られ、この辺の詳細は読者諸君の想像に任せると言われてるような気がしてなりません。

関東大震災を機に東京から大阪に移住し、そこからは関西を舞台にした作品を出しましたが、谷崎氏にかかれば標準語より関西弁のほうが美しく日本的にすら感じられます。